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【連載コラム|株主総会にみるコーポレート・ガバナンス】なぜ株主総会は6月に多いのか(第3回)

 

1. 6月がシーズンの理由

本連載の第2回では、どのように株主は取締役の選任議案へ投票しているかをお話ししました。第3回では、なぜ株主総会が6月に「シーズン」を迎えるのかをお話します。

ここまで、株主総会を一括りにしてきましたが、会社法では株主総会は、2つの種類に分けられています。

もう1つが、今回注目する定時株主総会で、基準日後3ヶ月以内に開催しなければなりません。第1回で取りあげたNTTの株主総会は、この定時株主総会になります。

基準日を決算日に設定するという慣行が実務で定着しているため、株主総会は通常、決算日後3ヶ月以内に開催されることになります。

日本の会社の多くが3月末を決算日としているため、その3ヶ月後である6月に多くの株主総会が開催されることになります。

株主総会の準備には時間がかかります。決算日から1~2ヶ月程度で株主総会の準備を整え開催するのは実務的にハードルが高く、どうしても6月に株主総会が集中してしまうというのが現状です。

2. 株主総会集中日

6月の中でも、最も多くの株主総会が開催される日は、株主総会集中日(以下、集中日)と呼ばれます。

今年は6月27日(金)になります。

3月期決算会社のうち、集中日に株主総会を開催する会社の比率である集中率の推移をみてみると(下図)、1980年代は上昇を続け、1995年には96.2%にまで達していることがわかります。この背景には、いわゆる「総会屋」への対策がありました。

総会屋とは、ある会社の株式を取得し株主となった上で、株主としての権利を濫用して会社から不当に金品等を収受あるいは要求する個人および組織のことです。

たとえば、1984年1月30日の株主総会でソニー(現・ソニーグループ)は、株主の納得を得るまであらゆる質問に答える方針を貫き、当時の大賀典雄社長が演壇に立ち続け株主からの質問に答えた結果、株主総会は午前10時から23時半まで続き、「マラソン総会」と称されました。

その結果、多くの会社は、株主総会で総会屋に立ち向かうのではなく、株主総会に総会屋が物理的に来られないように6月末の集中日に株主総会を開催するようになったのでした。

その結果、多くの会社の株主総会では、質疑応答なども出ずに何事もなく数十分程度で終える「シャンシャン総会」が常態化しました。

3. 株主総会の分散化

しかし、こうした状況は、1990年代後半頃に、大きく変わりました。その背景には、警察の取締強化により総会屋が排除されただけでなく、株主総会が重要な対話の場として認識されるようになってきたことがあります。

このような潮流は、東京証券取引所が2021年6月に改訂した『コーポレートガバナンス・コード』において「株主との建設的な対話の充実」を求めていることからも読み取ることができます。

株主総会を集中日に開催する会社は年々減り続け、昨年の集中率は29.5%にまで低下しています。

筆者が日本の上場企業を対象に行った研究では、業績が悪化しているような株主の前に立ちにくいときには、株主総会を集中日に開催することで、会社は株主への説明責任を回避している可能性が示唆されています。

今回は、なぜ株主総会が6月に「シーズン」を迎えるのかをお話ししてきました。最終回となる次回では、この株主総会シーズンが、6月ではなくなるかもしれないという近年の動向についてお話しします。 (第4回に続く)

 

 

本連載は、慶應義塾大学の内田大輔教授(2024年度から「経営戦略コース」のグループ指導講師を担当)に執筆いただき、生産性新聞に掲載された記事です。

生産性新聞2025年6月5日号:連載「株主総会にみるコーポレート・ガバナンス」掲載分

内田 大輔

慶應義塾大学 商学部 准教授

博士(商学)。九州大学大学院経済学研究院講師・准教授、慶應義塾大学商学部准教授を経て、2025年より現職。専門はコーポレート・ガバナンス論、経営戦略論。著書に『はじめよう! 経営学入門』(有斐閣)など。

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