
1. 身近な疑問から、イノベーションは始まる
「ねえ、どうして月はついてくるの?」
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Aグループ:好奇心伴走ツール「ワンダッチ」 発表資料より
子どもの何気ない疑問から、どんな事業が生まれるでしょうか。
退職後のシニアが街を歩くことは、地域の課題解決につながるでしょうか。家庭の中で、誰かが考え続けている小さな用事の数々を、ひとつのサービスとして支えることはできるでしょうか。
2026年9月25日、経営アカデミー「イノベーション・デザインコース」の最終発表会が開催されました。異業種の企業から集まった受講者が、社会や暮らしの中にある課題を起点に、3つの事業構想を発表しました。
教育、地域、家庭。テーマは異なりますが、いずれも普段は見過ごしがちなことを捉え直し、新しい価値へとつなげようとする試みです。発表後の講評では、構想の可能性を広げる問いとともに、事業として実現するための課題も投げかけられました。
2. 子どもの「なんで?」を、未来を切り拓く力に
Aグループ:好奇心伴走ツール「ワンダッチ」
生成AIを使えば、子どもの「なんで?」にもすぐに答えられる時代です。子ども自身が考え、試し、発見する経験を支えられないか。Aグループは、すぐに答えが得られるからこそ、子供の好奇心を刺激し、創造力を育むことが重要との危機感から事業アイデアに構想を広げました。
提案したのは、好奇心伴走ツール「ワンダッチ」です。
子どもが気づいたことを問いにし、自分なりの予想を立て、実際に行動して確かめる。そして発見を次の問いへとつなげていく。AIが答えを返して終わるのではなく、子どもを画面の外へ送り出し、現実の世界での探究を促す仕組みです。保護者にも子どもの体験を伝え、親子の会話を深めるきっかけをつくります。
興味深いのは、構想を考えるだけでなく、実際にプロトタイプを子どもに使ってもらったことです。講評では、そもそもAIによって子どもが安易に答えを求めるようになるのか、AIを使いこなす力こそ重要なのではないか、という問いかけもありました。
解決策を考える前に、解決すべき課題そのものをさらに深掘りすることの重要性が浮かび上がりました。
3. 仕事を卒業しても、地域には役割がある
Bグループ:「メキキマチミル」 -シニアの経験が街の未来をつくる
「今日行く場所がある。今日やることがある。誰かに求められている」
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シニアのニーズをペルソナとして具体化(Bグループ:「メキキマチミル」)
現役時代には、仕事を通じて自然に生まれていた、こうした機会。退職後、時間の自由が増える一方で、社会とのつながりや自分の役割を感じる機会が減ってしまうことがあります。
Bグループは、シニアの社会参加と地域課題の解決を結びつける事業「メキキマチミル」を構想しました。
シニアが日常生活の中で、いつもとは違う視点から街を見て、地域の課題に気づく。その気づきを、実際の体験を通じて集め、自治体の課題解決に生かす仕組みです。
シニアにとっては、行く場所や取り組むこと、誰かに求められる機会が生まれる。自治体にとっては、住民の視点から地域の課題を把握できる。ひとつの仕組みで、双方に価値を届ける構想です。
講評では「本当に健康寿命の延伸につながるのか」「自治体へのヒアリングが不十分」といったコメントがありました。
どんな体験なら続けたくなるのか。さらに、導入する自治体にどんな価値があるのか。構想を実現するためには、こうした点を具体的に検証していく必要があります。
4. 家事を分担していても、負担は分担できているのか
Cグループ:「くらしくみ」「mita」 -家庭の見えない負担を仕組みで変える
夫も家事に積極的で、お互いの仕事にも理解がある。それでも、家庭全体のことを考え、先回りして把握する役割が一方に偏っていたらどうでしょうか。
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認知的家事の負担が女性に偏る背景(Cグループ:「くらしくみ」「mita」)
Cグループが着目したのは、家事の中でも見えにくい「認知的家事」の負担です。
家事には、料理や掃除などの実作業だけでなく、予定を把握する、先々の必要事項を考える、家族の状況を見ながら段取りを組むといった仕事もあります。実作業を分担していても、家庭全体を考え続ける負担までは共有できていない場合があります。
この課題を解決するため、グループは2つのサービスを提案しました。
家庭の条件を整理し、家族に合った運営方法を一緒に設計する「くらしくみ」。そして、日々の細かなタスクを管理し、頭の中にある予定や気がかりを夫婦で共有するアプリ「mita」です。
目指すのは、単に家事を効率化することではありません。家庭運営を仕組み化することで、考え続けることや覚え続けることの負担を軽減し、家庭の事情によって自分のやりたいことを諦めずに済む状態をつくることです。
講評では、認知的家事を分析し、目に見えにくい負担を具体的に捉えた点が評価されました。
身近な問題も、改めて分解してみると、これまで見えていなかった課題が浮かび上がります。何を解決すれば本当に暮らしが変わるのか。その問いが、サービスの形を考える手がかりになります。
5. アイデアを事業にするために必要な問い
解決すべき課題は何か。利用する人は本当に使いたいと思うのか。実際に試したら、どのような反応があるのか。そして、顧客にとって価値があり、事業として成立するのか。
当初の想定を疑い、利用者の声を確かめ、必要に応じて構想を繰り返し見直していく。
発表し、他者から問いを受け、考え直す。発散と収束を繰り返しながら、事業アイデアの可能性を高めていく。アイデアをどれだけ捨てたかで、より実現性が高くなります。
6. 社会課題から、新しい価値を生み出す
子どもの好奇心、シニアと地域のつながり、家庭の中の見えにくい負担。3つの構想に共通していたのは、身近な現象をそのまま受け止めるのではなく、その背景にある課題を捉え直し、新しい仕組みで解決しようとしていたことです。
異なる業界や経験を持つメンバーと議論することで、自分たちにとって当たり前だった考え方が揺さぶられます。
社会課題から新しい価値を生み出すために、課題の背景にある因果関係を深く捉え、異なる視点を取り入れ、問い直しながら構想を具体化していくこと。その積み重ねが、未来の新しい事業につながっていきます。
【イノベーション・デザインコース 最終発表会 開催概要】
日時: 2026年9月25日(金)
形式: 会場開催(オンライン視聴あり)
内容:2026年度受講者による3つの研究発表