【インタビュー・対談】アサヒビール(株)・ アサヒグループホールディングス(株)

アサヒグループホールディングス株式会社
アサヒビール株式会社

経営アカデミーに毎年社員をご派遣いただき中核人材の育成にお役立ていただいている企業の中から、アサヒビール株式会社ならびにアサヒグループホールディングス株式会社の事例をご紹介いたします。実際に参加されたアサヒビール株式会社の方には、当時の様子ならびに経営アカデミーでの学びがその後どう仕事に活きたかについて、詳しく伺いました。また、アサヒグループホールディングス株式会社のご派遣責任者の方には、経営アカデミーを社員教育にどう位置づけ、人材育成に活用していらっしゃるかをお聞きしました。

取材日:2017年10月13日

ご参加者 インタビュー

 

 

【お話を伺った方】
伊藤 隆(いとう たかし) 氏 (写真 左)
アサヒビール株式会社 研究開発本部開発プロジェクト部 担当部長
2009 年度「技術経営コース」修了。経営アカデミーマスター。
2012 年インドネシアで現地食品大手企業との合弁で飲料の製造と販売を行う会社設立に従事し、製品開発からマーケティング、営業まで担当。2017 年9 月に帰任。もう一度機会があれば海外に出たい。

茂田 一郎(もだ いちろう) 氏 (写真 右)
アサヒビール株式会社 研究開発本部酒類開発研究所開発第三部 部長
2016 年度「技術経営コース」修了。経営アカデミーマスター。
受講当時は本社でワインと洋酒の新商品ローンチ等に従事。現在は焼酎の開発を行っている。

経営アカデミー参加の経緯

伊藤氏:2009 年に自分が参加する何年か前から経営アカデミーへの参加者が周りにいて、随分楽しそうだと羨ましく思っていました。他社の方々と知り合いにもなれるのも魅力に感じ、上司に自分も参加したいと希望を出したのがきっかけです。

茂田氏:私は昨年度(2016 年度)参加しました。元々経営アカデミーについては参加したいと希望を出していました。参加したい人が多く、いつ自分にそのチャンスが回ってくるか分かりませんでしたので、上司から打診があったときは「参加します」と即答しました。特に同世代の他社の方々との研修に大きな期待を持っていました。論文を一緒にまとめる中でかなり密接に異業種の方々と関われるのはなかなかない機会です。先輩から研修の様子を聞いて楽しみにしていました。アサヒビールでは、アカデミーの先輩たちが今年の参加者のために壮行会を開くのが恒例になっており、色々な情報やアドバイスをもらえるのです。「睡眠時間が削られて大変なときもあるよ」というような話も含めて、アカデミー受講にあたっての心構えを教えてくれました。多くの方が、色々な研修の中でも一番良かったと話してくれました。そのため、受講前にしっかりと覚悟を決められました。壮行会は前年度の参加者が幹事をするのが慣例になっていますので、今年は私が幹事をして参加者を送り出しました。アサヒビールだけでなくホールディングスの人も一緒に参加するのですが、年々OB・OG が増えていくので、壮行会の参加者も多く、なかなか大変ではあります。(笑)

 

印象に残っている講義

茂田氏:技術的なテーマの講義も大変有意義でしたが、中でもコース委員長からは社会における企業の存在意義についてのお話があり、非常に印象深かったですね。自分が会社で仕事をする上での考え方や指針を得た気がします。

伊藤氏: 私のときも本田宗一郎さんがどれだけ未来のことを見据えて仕事をしていたかというお話や、経営アカデミーOB の講師の方から、今後大変な仕事が待っているかもしれないが、飛び込むチャンスがあるなら自ら飛び込まないと生きている価値が無いのではないか、というお話があり大変感動しました。おかげで忘れかけていたチャレンジ精神を思い起こすことができました。そこで、経営アカデミー修了後、海外事業に挑戦したいと手を挙げたのです。ちょうどインドネシアで合弁企業立ち上げの仕事があり従事することができました。経営アカデミーに参加していなかったら、海外の事業になどチャレンジしようと思っていなかったはずです。自分の人生を決めるのは自分。実行に移すことができました。

 

グループ研究について

伊藤氏:BtoB 企業の成功要因について研究しました。普段の顧客との会話の中から先回りして新領域を切り開いている企業についての調査です。グループ研究中には、同じグループのメンバーと色々な情報交換をしました。ある企業ではこれからどういう時代がくるかを自分たちなりに考え、戦略マップを作り顧客への方向付けを行っているといったことを教えてくれました。ソフトウェア企業にインタビューに行った時には、要件定義が重要だが、顧客に入り込んでいる社員にどう自社側の考えとのバランスをとらせるかに苦労しているといったお話を聞けました。インドネシアで営業をしているとき、よくその話を思い出したものです。自分も顧客と自社の経営との落とし所の付け方について悩みましたから。私のグループの指導講師であった加藤みどり先生(東京経済大学 教授)には、インタビューのテープ起こしをするように指導されました。インタビュー内容をしっかり理解させるためだったかと思います。おかげで、今でも内容をよく覚えており、その後の仕事の場面で思い起こすことが多いですね。

茂田氏:私のグループは、製造業のサービス化が研究テーマでした。面白かったのは、あるインタビュー企業の強さの源泉はサービス営業にあり、そのための人材育成や経験の積ませ方などについて直接お聞きできたことです。技術経営コースは日中に講義とグループ研究があり17 時に終わるので、その後はグループのメンバーとよく飲みに行っていました。そこでのディスカッションも多かったですね。ハッピーアワーのお店を開拓し、飲みながらの議論もまた楽しかったです。今年の2 月に修了して約半年ですが、メンバーとはすでに2 回集まっています。

伊藤氏:修了後のつながりといえば、指導講師の加藤先生に依頼されて、学生さんたちの前で講演したことがあります。スーパードライ誕生秘話としてお客様を見て開発することの重要性や、今でもアサヒビールのスタンスとしてお客様の声を聴くことを大切にしていることなどをお話ししました。我々にはまだ聴けていないお客様の声があるはずですし、そこからイノベーションが生まれるのだと思っています。

 

アサヒビールの人材育成について


茂田氏:
比較的色々な部署に異動させて人材育成を図っていますね。私も最初は酵母や微生物の研究をしていましたが、そこから化学分析をしたり研究開発でも色々なことに携わらせてもらいました。異動するのは大変なことも多いですが、視野を広げたりイノベーションを起こす環境づくりだったりの意図があると思います。

伊藤氏:アサヒビールでは若いうちから最前線に立たせることが多いです。基本的に上司は細かく指示せず見守ります。また、ハキハキと挨拶するなど明るい人が多いです。私が入社を決めたのは、この明るい社風に魅力を感じたからです。インドネシアでも、現地の人からアサヒビールの人は明るいと言われました。社長に対してもさんづけで呼びますし、誰でもなんでも言い合える文化がありますね。

茂田氏:経営アカデミーへの派遣は2 月までには決定されるので、翌年度の参加者は2 月のグループ研究最終発表会を見ることができます。人材育成部門から言われてやっているわけではありません。壮行会もそうですが、縦のつながりも自然と大切にしている会社だと思います。

茂田氏:今年から所属長(部長)になりましたので、昨年経営アカデミーで学んだことを消化して、これからどんどん活かしていきたいと思っています。

伊藤氏:経営アカデミーを修了して10 年近くたって改めて振り返ってみると、自分の人生を自分で舵取りしていくにあたり、根幹の部分で経営アカデミーは肥やしになっていると強く感じます。多くの方が経営アカデミーをきっかけに、自分の人生を切り開いていただきたいと願っています。

 

ご派遣責任者 インタビュー

写真

【お話を伺った方】
池田 恒宏(いけだ つねひろ) 氏
アサヒグループホールディングス株式会社 グループR&D総務部協創推進グループ 担当部長
1988 年入社以来研究開発業務に従事。ホールディングスの研究開発部門にて戦略策定を経て、6 年前に協創推進グループに移りR&D 部門の人材開発に携わる。

人材育成の方針と、その中での経営アカデミーの位置づけについて

人材育成の基本方針として、大きく3 つあります。
OCT(On The Chance Training): チャンスを与えて大きく育てる。一つ上のポジションの仕事にチャレンジ。
OJT:上司や先輩から直接指導。
Off-JT:人材育成部門が研修を用意。OJT を補完するもの。
人事、R&D、営業、製造など各部門で育成・研修計画を作成。ホールディングスのR&D 部門では、新入社員3 年プロ化計画を開始しました。マーケティングやプロジェクトマジメント等の研修を企画・実施しています。プロデューサー以上の選抜者は技術経営マネジメント研修を受講します。

研修体系と具体的な研修内容については、ネット上で全社員が見られるようになっています。年初に所属長と相談し自分である程度計画を立てて研修参加に手を挙げられるようになっています。

経営アカデミーはその技術経営マネジメント研修の中でのMOT 研修にあたります。全員が参加出来るわけではなく、次期事業場長クラスの業績、人望のある人材から選抜し派遣しています。毎年ホールディングスとアサヒビールからそれぞれ1 人か2 人ずつの狭き門にしています。選ばれた人しか参加できません。そのことで研修効果も上がります。

先輩から後輩へ、いいスパイラルが出来上がっている

経営アカデミーへの派遣は15 年以上前から続いています。毎年参加者からの評判が良く、グループ研究の内容が学会で発表された例もありますが、事後の報告会での報告の質も高いのが理由です。先輩が後輩に経営アカデミーを薦め、多くの社員が経営アカデミー参加希望の手を挙げて順番待ちをしているような状況です。研修実績、先輩からの推薦、意欲的な研修受講、キャリアへの反映、後輩への推薦、というふうに、自然といいスパイラルが出来上がっています。アサヒビールでは、参加者の決定も早く、2 月のグループ研究最終報告会に次年度の参加者がオブザーブすることも慣例になっています。

 

「行動変容」こそが一番の研修成果

研究者は研究ばかりしてきた人がほとんどです。どうしてもファイナンスやマーケティングの視点については弱い人が多いと感じています。ここ10 年ほどは研修体系に組み込んでいますが、自分で勉強していくしかありません。参加者には技術を経営的に評価する視点、経営側の視点を得てもらい、将来的には何人かが経営層になってもらうことを期待して送り出しています。経営陣は文系の人が多いのですが、R&D から成果や今後の技術動向、戦略などについてしっかりと説明し、引っ張っていける人材が必要です。研究所をリードし、新しいテーマを見出し、部下や次世代人材を育てるという使命ももちろんあります。リーダーシップを育てる要素も大きいです。

もともと素質のある人が参加していますが、特に受講後には経営の視点での説明がしっかり伝えられるようになるなどの成長を感じます。他にも、経営アカデミー修了後も積極的に各種社外セミナーに参加したり、後輩や部下にも会社に閉じこもらず外の風を感じるように薦めたりする人が多いです。海外事業に挑戦する人も出てきました。このような「行動変容」こそが一番の研修成果と言えます。異業種交流研修では、自分の足りないところがよく見えてきます。それで更に勉強したり他者をリスペクトしたりするようになりますし、悩みを共有することでポジティブな行動へのきっかけをもらうこともあります。研究者としての生き方や人生そのものを突き詰めて考える人も多いです。人材育成部門の我々自身も外に出て行くことを意識しています。机上で考えたりネットの情報だけに頼ったりするのでなく、色々な人に会いに行って話を聞くことで、新しい情報を得たり人脈がつながったりすることを大切にしています。合宿形式のものにも参加しますよ。本音ベースの話ができますからね。

アサヒグループ内での横のつながりも大切にしています。研修には、アサヒビールやアサヒ飲料などグループ企業の社員も参加可能です。アサヒグループ内での異業種交流ができるように、敢えて寝食をともにする形の研修を取り入れています。それまではプライドや文化の違いがあったとしても、悩みを共有していく中で一緒にやっていこうという気概が研修をきっかけに生まれることがあります。経営アカデミー参加者への壮行会がホールディングスとアサヒビール合同で自発的に行われるのも、これを体現していることの一つだと思います。

※所属・役職は2017年10月13日時点

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