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コラム

【グループ研究|トップマネジメント・コース】変化に勝つ判断軸――意思決定を回し続ける組織の条件

 

経営アカデミーグループ研究

VUCA 時代を生き抜く企業の羅針盤

~ヒトとAI が解き明かす長寿企業の強み~

(2025年度 トップマネジメント・コース Dグループ)

 

 

1. VUCA時代に求められる意思決定力

市場環境の不確実性が高まる「VUCA時代」において、企業に求められるのは変化を前提に意思決定を回し続ける力だ。経営アカデミー「トップマネジメント・コース」2025年度のDグループ(メンバー7人)は、このテーマを研究。メンバー3人に、変化を読み取り判断軸を磨く実務のヒントを聞いた。

話を聞いたのは、日鉄ソリューションズITソーシング事業部長の長谷川達也氏、NECソリューションイノベーター・ソリューションサービス事業ラインのシニアディレクターの政岡凡方氏、ノムラアークス専務取締役の土井勇樹氏。3氏が示したのは、変化局面で何を見て、何を決め、どう動かすかという判断軸だった。

(左)NECソリューションイノベーター シニアディレクター 政岡凡方氏

(中央)ノムラアークス 専務取締役 土井勇樹氏

(右)日鉄ソリューションズ ITソーシング事業部長 長谷川達也氏

 

2. 変化対応と投資

変化への備えは、危機時の対症療法では足りない。平時から「変化を感知し、戦略を決め、やることを絞り、見直しながら回す」循環を経営の基本動作として持てるかが、変化対応力を左右するという。政岡氏は「意思決定を速くするのではなく、速く回る仕組みに変えるのが一番の学び」と語った。

研究で中心に据えたのは、外部環境の変化を捉え、機会を選び取って決め、組織と資源配分を組み替え続ける力だ。弱い企業ほど外的ショックに脆いとの認識で一致した。投資判断も論点になった。財務が厳しい局面ほど費用削減は短期的に効くが、投資を止めれば「次の種」が育たない。土井氏は「厳しい局面ほど投資を止めない発想を自社の判断に当てはめたい」と述べた。

 

3. 意思決定の設計

意思決定の設計では、稟議の段階が多いなど日本企業の事情が判断の遅れにつながりやすい一方、トップの即断に頼り切れば次世代育成や権限移譲が進まないとした。状況に応じて統制と委任を使い分け、スピードと質を同時に高める必要がある。社長任期の短さが改革の制約になり得るとの指摘も共有した。研究プロセスでは生成AIも活用した。骨子づくりや要約・統合、評価観点のたたき台にも有効だったが、数値は出典の食い違いや誤りが目立ち、再現性に課題が残った。長谷川氏は「AIは整理に有効だが、数値は最後に出典確認して確定した」と振り返る。AIは発想支援に限定し、最終判断は人が責任を持つ二段構えを徹底した。一方、破綻・衰退企業は公開データが乏しく、原因と結果の断定や時系列の変化には踏み込めていない。弱点領域が年を追ってどう低下し、存続性とどう結び付くのかは今後の課題とした。

経営アカデミー「トップマネジメント・コース」2025年度Dグループの討議の様子。
変化対応と意思決定の判断軸を議論した。

 

4. 学びを実務へ

学びは知識にとどまらない。経営者講話と理論を往復する中で視座が上がり、財務、統治、人材の見立てや人脈づくりの重要性を再認識したという。未経験領域として、全社の資金の見方や株主対応を挙げる声もあり、買収・統合などの実務に研修の知見を当てはめるイメージが具体化した。異業種幹部との討議は、自社の前提を揺さぶる場にもなった。研修後も続くネットワークは、次の意思決定で迷ったときの相談相手にもなる。

不確実性が高まり、3~5年先を見通すことが難しい時代だからこそ、変化を前提に「気づく→判断する→変える」の循環を回し続けることが重要になる。3氏の言葉には、その習慣を組織に根付かせようとする実務者の手応えがにじんだ。

今後は、社内データの整備や検証手順の明確化を進め、根拠となる数値や計算方法を示した上でAI活用の精度と再現性を高める。変化に勝つ意思決定は、平時から判断軸を磨き続けられるかにかかっている。

 

5. 生成AIで研究進化(学習院大学名誉教授 内野崇氏〈講評〉)

内野 崇

学習院大学 名誉教授

2009年~「トップマネジメント・コース」コーディネーター。
1985年~「組織変革とリーダーシップコース」グループ指導講師、1991年~同コースコーディネーター。

Dグループの研究は、短期間ながらテーマ設定から仮説、手法、結論までのストーリーが統合された成果であり、長寿企業の変化対応力(レジリエンス)の源泉を過去・現在・未来の視点で多角的に捉えた点を高く評価する。とりわけ、近年注目されるダイナミック・ケイパビリティ(環境変化に対応し変革する力。以下DC)に着目し、3つの中核要素を9項目に細分化した測定設計は巧みである。

生成AIで有報・統合報告書・HP等の膨大な公開情報を収集し、人手で確認しつつスコア化、さらにロジスティック回帰等で数量化し、業績との相関も示した手堅さは、プロの仕事と言える。測定困難とされてきたDCを「レジリエンススコア(DC指数)」として提示した意義は、実務と研究に大きいインパクトを与えるだろう。

末尾の「守り」から「攻め」への転換、レジリエンス文化の醸成も時宜を得た提言である。本研究は、経営アカデミーに集う企業人がそれぞれの知見と経験の切磋琢磨を下敷きに、生成AIを武器として研究者に負けないグループ研究を次々と生み出す新時代の到来を予感させ、その先駆を成す優れた研究である。

 

産学協同のビジネススクールを運営する日本生産性本部の経営アカデミーでは、参加者による複数名のグループごとに「グループ研究」に取り組んでいます。本連載は、2025年度の研究がどのようなプロセスを経て進められたのかを紹介する、生産性新聞掲載の記事です。

生産性新聞2026年3月15日号:「経営アカデミー トップマネジメント・コース 参加者に聞く」掲載分

 

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