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コラム

DXブーム対応から考える企業マネジメントの可能性

 

経営アカデミーグループ研究報告書より

DXブームはもうええでしょう

「ふて」い期におこる経営ブームとの「ほど」よい付き合い方

(2024年度 経営戦略コース Aグループ)

産学協同のビジネススクールを運営する日本生産性本部の経営アカデミーは、参加者の研究成果として、各コースのグループごとに「グループ研究報告書」を作成しています。

 

1. DXブームに向き合う意味とは

現代社会の企業経営において、デジタル・トランスフォーメーション(DX)は企業の競争力を高めるための重要な手段となっている。

既存研究は、経営上のブームが企業に与える影響について、十分な議論ができていない。特に本研究が注目するのは「特定の経営ブームに対して自分たちがそれにのれているかという認識の違い(自分たちが感じる距離感)」と、「自分たちが経営ブームにのっているというアピールの有無(外に見せる距離感)」である。こうした距離感に関する議論を行うために、本研究は日本企業のDXに関する定性研究をもとに、以下の二つのリサーチクエスチョンに答えることを目指す。

RQ1
DXブームにのれているか否かに関する従業員の認識に影響を与える要因は何か

RQ2
DXブームにのっていることをアピールする企業とそうでない企業の違いは何か

本研究はDXブームに対応する意義と意味合いについて考察し、今後も起きるブームに対峙する際の先行指標の設定可能性について探求する。DXという当面のブームを題材とした分析を通じて、ブームに対する従業員の認識にはどのような要因が影響を与えるのか、またどのような時にそのブームにのっていることをアピールすべきなのかを明らかにできれば、次のブームに対して望ましいマネジメントができる可能性が高くなる。そうしたマネジメントを提示することが、本研究の実務的な目的である。

 

2. ブームとの距離感を探る調査と分析

本研究は、新たな要因を発見する必要があるため、対象企業へのインタビューに基づく定性分析を行った。本研究の分析対象は、DXブームに対して、ブームに沿った活動ができていると当事者が判断している企業(ブームにのれている企業)と、そうでない企業(ブームと距離のある企業)、さらにそうした取り組みを外にアピールしている企業とそうでない企業である。

これらの企業を明らかにするためにまず、外にアピールしている企業として、DX認定やDX銘柄を取得してきた企業をリストアップし、調査可能な企業を探索した。結果、リース業、金融業、製造業から1社ずつ企業を選ぶことができた。一方外にアピールしていない企業として、有価証券報告書や中期経営計画などの公式文書においてDXに関する活動を公表している企業の中から調査可能な企業を探索し、金融業1社、製造業2社を選出した。

これらの企業へのインタビューを通じて、DXを担当しているインタビュイーが、DXブームに沿った活動をしている(対応できている)と認識している企業が4社(リース業A社、金融業B社、金融業C社、製造業F社)、そうでない企業が2社(製造業D社、製造業E社)存在した。結果、RQ1とRQ2に対応する企業群のペアができ、一定の結論が得られたため、これらの6社を調査対象とすることにした。

データ収集のために、本研究はこれらの企業へのインタビューを行った。インタビューから得られた一次データと、新聞雑誌記事、および各企業のホームページやIR情報などの二次データから、各社事例を対象に比較定性分析を行った。

 

 

3. DXブーム認識を分ける3つの要因

調査対象の6社は、それぞれ対応の時期の違い、DXのブームにのっているかどうかの認識の違い、DX認定やDX銘柄選定の有無はありつつも、どの会社も何かしらのデジタル化やDXに係る取り組みを行っていた。ここで注目すべきは2点である。

まず、DXのブームに対して遅れ気味であると認識している企業でも、デジタル化を行う部署が存在し、ある程度の取り組みを行っていることである。D社は2018年の時点でIT戦略課を作り、デジタル技術をビジネスに活用しようとする取り組みを行っていた。またE社は、AIなどの取り組みを1990年代から取り組んでいた。すなわち、ブームにのれていないと感じている企業でも、デジタル化に関する取り組みが全くなかったわけではなく、現場レベルでは様々な活動が行われているのである。

次に、DX認定やDX銘柄選定の有無とDXのブームにのっているかどうかの認識は完全に一致するわけではないことである。もちろん、DX銘柄に選ばれている企業の中で、自社がDXブームにのっていないと判断する企業はいなかった。しかしB社のように、DX認定やDX銘柄を取得していなくても、自社としてDXのブームに合わせることができていると考えている企業もいる。また、A社も、近年DX銘柄からDX注目企業に評価が下がるも、それ自体に危機感を感じているわけではなく、近年の世の中の流れにのりながら、自社の改革を進めようとしていた。

では、ブームにのれていると認識されている企業とそうでない企業の違いは何か。そして、そうしたブームにのれていることをアピールする企業とそうでない企業の違いは何か。それらに関連する三つの命題を提示する。

命題1
経営ブームに関連した活動への経営陣の関与が強いほど、従業員はブームとの距離を近く感じる。

命題2
経営ブームに関連した外圧・内圧が強いほど、経営ブームへの経営陣の関与は強くなる。

命題3
重要視するステークホルダーの範囲が企業の外に広がっているほど、経営ブームと自社の距離を外部にアピールするようになる。

外部のステークホルダーによりアピールしたい場合、経営ブームとの距離に関するアピールに経営資源が割かれるが、内部のステークホルダーへのアピールを行う場合は、外部アピールに資源が割かれないこともある。

 

4. 経営陣の関与がブームとの距離を左右する

本稿では、DXブームに対して、ブームに沿った活動ができていると当事者が判断している企業(ブームにのれている企業)と、そうでない企業(ブームと距離のある企業)、さらにそうした取り組みを外にアピールしている企業とそうでない企業の計6社の事例研究を行った。結果、経営陣の関与が経営ブームとの距離に影響を与え、さらに経営ブームへの経営陣の関与の差はブームに関連した外圧・内圧の強さによってもたらされることが明らかとなった。また、経営ブームのアピール度は、重要視するステークホルダーの範囲の影響を受けることが明らかとなった。

 

5. ブーム対応をマネジメントに活かす3つの実務的示唆

一つ目の示唆は、経営ブームとの距離感は経営陣の関与が大きいことを明らかにした点である。ここで重要なのは、それぞれの企業がブームに関連する様々な取り組みをすでに実施しているものの、企業の担当者によってそのブームへの距離感に違いがあるということである。すなわち、担当者が「経営ブームにのれている」と感じるためには、経営陣がそのブームに対して関与し、意味づけをしてあげることが重要となるのである。

二つ目の示唆は、ブームに関連した外圧・内圧の強さによって経営陣の関与度合いに差が生じることを明らかにした点である。ミドルの立場からいえば、経営陣をブームに関与させるためには、外圧・内圧を認識させるようにしなければならないといえる。そのためには、事例で見たような外遊や政府との会合など、経営陣が外の世界に触れることが重要となる可能性がある。

三つ目の示唆は、ブームのアピールは常に行わなければならないわけではないことを示したことである。より広いステークホルダーにアピールしたい場合、ブームのアピールに経営資源を割くことが検討されるが、業界内の関連会社や従業員のような、特定のステークホルダーへのアピールを行う場合は、アピールをすることのコストを払ってでも得られる効果があるとは限らない。そのため、経営ブームを象徴するような認定や認証の取得に動くかどうかは、各社が重視するステークホルダーに合わせて、柔軟に考える必要があるといえるだろう。

 

産学協同のビジネススクールを運営する日本生産性本部の経営アカデミーは、参加者の研究成果として、各コースのグループごとに「グループ研究報告書」を作成しています。本連載は、2024年度の報告書の概要を紹介したものを、生産性新聞に掲載された記事です。

生産性新聞2024年6月15日号:連載「2024年度 経営アカデミー グループ研究報告書から」掲載分

 

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