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2025年度 お知らせ

次世代リーダーが語るリーダーシップ─経営アカデミー60周年記念「リーダーズフォーラム2025」第1部レポート

フォーラム開催の背景と趣旨

日本生産性本部は1955年の設立以来、海外視察や産学連携を通じて、経営人材育成の重要性を提唱して参りました。経営アカデミーは、日本生産性本部の創設10周年を記念し、我が国初の本格的なビジネススクールの1つとして開設され、2025年には修了生15,834名、参加企業1,024社(2025年11月現在)に達しております。60年の歴史を重ねてもなお、経営人材育成の重要性は変わらず、設立61年目に入る2026年度も9コースを開催予定です。
※詳細は初めての方へや歴史をご覧ください。

今回のリーダーズフォーラム2025は、日本生産性本部70周年、経営アカデミー60周年を記念した特別企画として開催。リアル会場には、経営アカデミー修了生を中心とした関係者が集まり、第1部にはオンラインからも多くの方が参加し、多様な業種・役職の方々が経営人材育成とリーダーシップに関する学びを深めました。

【開催概要】
日時:2025年11月12日
会場:日比谷国際カンファレンススクエア
主催:日本生産性本部 経営アカデミー
登壇者(第1部):
  ・玉城 和美 氏(AGC株式会社)
  ・岸 恵一 氏(コニカミノルタ株式会社)
  ・松岡 宏治 氏(全日本空輸株式会社)
  ・沼上 幹 氏(経営アカデミー 学長)

 

第1部 次世代リーダーたちが語る、リーダーシップの軌跡とこれから

はじめに、AGC、コニカミノルタ、全日本空輸(以後ANA)の次世代リーダー3名が自身の軌跡を語り、そのあと沼上学長との対談が行われました。現場での意思決定や組織運営のリアルな事例から、現代リーダーに必要な視点が明らかになりました。

■ 玉城 和美 氏 AGC株式会社 執行役員 広報・IR部長 (2008年 経営財務コース修了)

AGCグループは1907年創業で、建築用ガラスを中心に事業を展開しています。自動車用ガラスでは世界トップシェアを誇り、2024年度の売上は2兆円に達しました。

玉城氏は大学卒業後に住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)に入行し、法人向け運用・管理サービスを担当。30代後半にAGC(旧旭硝子)に入社し、間もなく経営アカデミー経済財務コースを受講しました。銀行や株式アナリストとしての経験を活かし、企業側のIR(投資家向け広報)を担当。すべてを自分ごと化する姿勢と、半歩先を見据える思考がリーダーとしての自信につながったと語ります。

「社名変更プロジェクトではチームを統率し、ブランディングを進めた。一度やり直す局面もあったが、そんな中でも社員全員の納得感を得ることが最重要だった」と振り返りました。

 

■ 岸 恵一 氏 コニカミノルタ株式会社 執行役員 技術開発本部長 (2021年 経営戦略コース修了)

コニカミノルタは152年の歴史を持ち、オフィス向けカラー複合機や産業印刷、デジタルX線画像診断システムなどを展開しています。2030年に向けた環境対応を課題とし、大学や国研、JAXA、トヨタとの共同研究に取り組み、次世代の技術開発を進めています。

岸氏は大学卒業後に京セラ、Microsoftを経てコニカミノルタに入社。技術開発やIT企画を通じて、人と組織の成長を優先し、世の中に必要とされる技術開発を重視しています。課題解決の手段は変わっても、目的を見失わないことが重要と語りました。

 

 

 

■ 松岡 宏治 氏 全日本空輸株式会社 執行役員 労政部長 (2000年 人事労務コース修了)

ANAグループは航空運送事業だけでなく、喜びや感動の提供を通じて豊かで平和な社会や経済の活性化に貢献することを目指しています。松岡氏は大学卒業後に千歳空港支店に配属後、整備部門や客室部門などを担当。

日本生産性本部出向時には人事労務コースに参加し、「伝えること+伝わること」の重要性を学びました。コロナ禍の客室センター業務推進部では、雇用を守る・復活後を想定する・現場からヒントを得るという3軸で意思決定を行うことで、確信をもって施策を遂行できたと述べています。

最後に松岡氏はリーダーとして大切なこととして、以下の3つを挙げました。
・コンフリクトから目をそらさない
・EQや人間力を重視
・目標ではなく「志」、責任感ではなく「使命感」を持つ

 

■ 沼上学長との対談(Q&A形式)

左から 沼上学長、 玉城氏(AGC)、岸氏(コニカミノルタ)、松岡氏(ANA)

Q1:自身が心掛けているリーダーシップスタイルは?

玉城氏(AGC)
その場の状況に応じて、トップダウン、ボトムアップを使い分けることが多いです。まさに沼上先生がおっしゃった、ミドル・アップダウンということです。

岸氏(コニカミノルタ)
化学や機械を担うプロ集団なので、意見をまとめ上げることが日々のリーダーシップです。ただし、決めなければいけないときは決めます。(沼上学長:専門領域外の場合の判断をするときはどうしているか?)「わからないことはわからないで武器にしている」と思っています。わからないと率直に認めることで、上司・部下ともにコミュニケーションが活発になります。わからない時に教えてくれるメンバーがいるという場を作ることが大事です。

松岡氏(ANA)
ボトムアップやサーバントリーダーシップ的なアプローチが多いです。航空運送事業という労働集約的な組織なので、スピードよりも最適な状態を目指す意思決定やマネジメントを心がけています。ボトムアップの文化を土台にしつつ、アサーションの文化(異常や懸念をためらわず発信する文化)を重視しています。現場の声が出ること、縦のコミュニケーションが活発であることが安全にも直結します。

 

Q2:決めた後に部下から異論が出たらどうするか?

玉城氏(AGC)
目的や課題がはっきりしていれば、手段は柔軟に変えていいと考えます。手段の認識が広がれば選択肢が増えるので、慎重に検討しつつも新しいものは取り入れて最適解を探します。

岸氏(コニカミノルタ)
ソフトウェア業界での経験からドッグイヤー(技術の速度変化)を実感しています。課題を技術で解決することが仕事なので、課題解決につながるなら手段を変えるべきです。朝令暮改ではないという前提は大事ですが、臨機応変に対応します。課題が明確であれば、部下は「ぶれていない」と理解できます。

松岡氏(ANA)
「正しいことをやる」ことを基軸にしていますが、途中で環境や見え方が変われば、志を貫くために勇気を持って変更することも必要です。発信者の気分でコロコロ変わると映れば信頼を損なうので、趣旨や背景を丁寧に説明することには注意しています。

沼上学長の指摘(補足)
難しい意思決定ほど、決定してから学ぶことが多く、初めの話に固執すると柔軟性を欠く。チームとしての学びを意思決定にどう生かすかが重要で、場合によっては「朝令暮改」に見える対応もあり得る、という指摘がありました。

Q3:リーダーとして「ひと皮剥けた」経験は?/誰から学んだか(ロールモデル・反面教師)

玉城氏(AGC)
「ひと皮剥けた」とまでは言えないが、社名変更プロジェクトのなかで、時間をかけて準備した施策を仕切り直すことになり、3か月でやり遂げた局面は、非常に大きな経験になりました。沼上学長からは、ブランド変更は意思決定が非常に大きく、メンタル・アベイラビリティ(心理的可用性)にも影響すると指摘されました。(ロールモデルについては)任せて経験を積ませてくれた上司を模範としています。部下の話にも耳を傾けるようにしていきたいです。

岸氏(コニカミノルタ)
明確な単一の契機はないが、転職・プロジェクト変更・役職変更などの積み重ねが学びになっています。Microsoft時代の経験は大きな学びで、勢いでやっていたことが後に大きなチャレンジだったとわかることがありました。(ロールモデルについては)憧れる上司もいれば意見の合わないパートナーもおり、両方から学ぶべきことは多数あります。

松岡氏(ANA)
コロナ禍の対応が一番の試練だったと振り返ります。短期間で大きな決断を迫られるなかで、多くの人を巻き込みながらモチベーションを維持する必要があり、それが大変でした。(ロールモデルについては)尊敬する上司、そうでない上司、いずれからも学びがありますが、学びとして心に残っているのは、前者である場合が多いです。

 

アンケート結果

第1部の対話セッションについて、参加者からはさまざまな視点や気づきが寄せられました。以下は当日の感想コメントの一部です。

  • 現役リーダーのご経験、考えをお聞きできる貴重な機会で、大変参考になりました。このような機会は社内や他の研修でもほぼ聞くことのできない内容でありがたいです。
  • 実際に各社で組織を率いるリーダーの方々それぞれのリーダーシップに対する考え方をお伺いし、大変参考になりました。様々な職場環境の中で、期待されるリーダーシップ像は千差万別であり、それぞれの環境で最も求められるリーダーシップを見出すのが大切なのだと思いました。
  • 実践で活躍されている御三方の経験でスケールの違いこそありますが、同じようなことに悩み課題とされていて、共感と考え方の気付きがあったと思いました。

 

まとめ

第1部では、次世代リーダーと沼上学長による対話を通じて、リーダーシップの本質や意思決定のあり方、成長の契機が浮き彫りになりました。

トップマネジメントの実践的な視点や、現場の声を反映した柔軟な意思決定の重要性を学ぶことができ、日々の業務や自身のリーダーシップに活かせる示唆を得る場となりました。

 

2026年度 経営アカデミーのご案内

経営アカデミーは、60年の歴史に支えられながら、時代や環境が変化してもなお問い続けるべき「経営の本質」に向き合い、実践力と理論を融合させた学びの場として、次世代リーダーの養成とネットワーク形成を進めていきます。
2026年度のコース一覧はこちらからご覧ください。

2026年度研修コース一覧

 

※第2部レポートについて
第2部の分科会セッションは、実務に根ざした研究テーマを深める場として開催されました。
内容が詳細かつ多岐にわたるため、第2部の開催レポートは別記事として公開予定です。

 

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