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【インタビュー・対談】慶應義塾大学 教授 八代 充史 氏と日産自動車(株)立原 恵美子 氏


(日産自動車グローバル本社 ギャラリーにて)

経営アカデミーの大きな特長の一つが、専任の指導講師のもとで約9か月にわたって行われるグループ研究。1998年に人事労務コース(現・人事革新コース)にてグループ研究を指導くださった八代充史先生と参加者の立原恵美子さんにお話を伺いました。

 

【お話を伺った方】
立原 恵美子(たちはら えみこ) 氏 (写真 左)
日産自動車株式会社 日本事業人財開発部 部長
1998 年度「人事労務コース(現・人事革新コース)」修了。経営アカデミー・マスター。
日産自動車に入社後、横須賀の工場人事、本社人事を経て、研究開発部門の人事スタッフ時代に、経営アカデミーを受講。その後は人事企画、採用、品質・開発部門の人事課長を経て欧州の統括会社へ出向。帰国後はCEOオフィスでゴーンCEOの下で働いた後、人事に戻り(企画部門)、2016年から現職。日本リージョンの人事責任者。

八代 充史(やしろ あつし) 氏 (写真 右)
慶應義塾大学 商学部 教授、博士(商学)
経営アカデミー「人事革新コース」コーディネーター。
現代日本企業の人的資源管理を実証的に研究。ホワイトカラーの異動と昇進,女性労働者の雇用管理,高齢化・定年延長と雇用管理,人的資源管理の国際比較、人事制度の理論的分析等。経営アカデミー人事系コースのグループ指導講師(1997 年度~ 2003 年度)、コーディネーター(2007 年度~)を務める。

経営アカデミー参加のきっかけと上司の期待
「情報のアンテナを高く、物事を深堀りして」

 

立原氏:受講当時(1998 年)、R&D 総合研究所の人事担当者でした。総合研究所は、最先端技術の研究をしているリサーチャー集団の組織で、研究員の人財強化に取組んでいました。当時の会社は経営危機を迎えており経費削減も厳しかった時代でしたが、「立原さんは外で勉強したほうがいい」と、上司が貴重な予算を工面して研修費用を捻出してくれました。経営アカデミーに参加するチャンスをくれた上司には大変感謝しています。上司からは、目の前の仕事だけにとらわれず、情報のアンテナを高くして、問題意識をもって仕事に取組み、物事を深堀りすることなどを期待されていたと思います。ただ、最初はどう問題を俯瞰するのかもわかりませんでした。忙しい中、週に1 日研修で抜けるのは業務としては大変でしたが、欠席せずにしっかり通わねばと思っていましたし、会社の外で情報収集できるのは楽しかったですね。

 

経営アカデミーでの講義
〜目線を上げたり下げたり〜

立原氏:講義は、自分の興味の範囲だけでなく、HR について全方位網羅されていたと思います。大学の先生からハイレベルな視点で理論を基本から学べたことは貴重でした。アカデミーに通う大きな魅力の一つでしたね。実業の世界にいる我々は現実的なフレームでしか物事を見られないことがあります。日常の仕事では目の前のことだけに時間を注いでしまいがちですが、講義では理念や理論、フレームワークなどを学び、翌日仕事に戻ってそれをどう現場とつなげるか考えることができました。

八代氏:体系的な学習と実務の往復により目線を上げたり下げたりすることは、理論を実践に活かすいい訓練になったはずですね。

立原氏:当時女性参加者はまだ少なく、クラスでは紅一点だったので、講義では必ず自分が指名され意見を聞かれました。それなら先に意見を言っておこうと、講義でもグループ研究でも積極的に発言しました。度胸もつきました。

 

グループ研究
〜日常の課題を超えて、立場を超えて議論〜

八代氏:グループ研究のタイトルは最終的に「管理職層のリエンジニアリング ~ライン管理職至上主義の終焉とこれからの管理職層の活性化策~」となりました。確か、グループ研究開始時のキーワードは「専門職」であったはず。専門管理職について共通した課題を持っている企業が多くありました。会社の中で同一に扱われてしまうが、それでいいのだろうか、という問題意識から始まりました。ホワイトカラーの専門職を「熟練専門職」としようという銀行からの参加者の意見も貴重でした。そういう人たちをどういう構成(ポートフォリオ)に配置するかを論文に入れました。

立原氏:グループ研究では日常の課題を超えて、例えばパラダイムシフトについてなど、まったく違う業界の方たちと意見を戦わせました。モチベーション、活躍、成長などについても、これほどまで語り合うことはないだろうというくらい考える機会を得ました。他社でも同じ悩みを持っていることを知り、職位、立場を超えて安心して意見を交わすことができましたし、その際、衝突を起こしてもしっかりと議論を戦い合わせることで、目標に向かってみんなが一つの気持ちになれた達成感がありました。

 

グループの結束力
〜利害のない関係、腹を割って話せる仲に〜

立原氏:アカデミーに参加してから20 年。毎年何度か会っているので、みんな変わらないなと思っていましたが、当時の写真名簿を見ると、やはり随分変わりましたね。( 笑) 
 グループの結束力が高まったのは、メンバーの業種も色々で、年齢も職位もジェンダーも違っており利害関係もないのがよかったのではと思います。さらに、第2 部の“ 研究会“(「冬の宿」という居酒屋)で、改めて議論を深めたことも大きいですね( 笑) 。“ 研究会” は毎回、「八代組」という名前で焼酎のボトルをキープしていました。毎回、ボトルは空にしていましたけどね。ここでも、その日の講義のテーマから、労務、人事管理の世界をどう変えていけるのかまで、本音を語り合いました。会社の同僚よりも腹を割って話せる仲になりました。女性だからって、決してちやほやしてくれなかった!

八代氏:立原さんは「男前」ですからね(笑)。

立原氏:この結束力を20 年保てているのは、八代先生のおかげです。修了後も我々の飲み会には必ず顔を出してくださいますし(飲み会の時間が長いので必ず先生は途中でお休みされますが)、何度も先生の奥様の手料理でご自宅に招いてくださっています。こんなに面倒見のいい先生はなかなかいらっしゃらないと思います。私がパリに駐在していたときには奥様と二人でお越しくださり、一緒にベルサイユへドライブしたり、オペラ座近くでお食事をしたりと、思い出深いことがたくさんあります。

八代氏:働き方改革が叫ばれる折柄、お酒の飲み方にも適度な休憩が必要なんですよ(笑)。私がイギリスに研究休暇中のときは、日産がオックスフォードに寄附をして作られた日産研究所を拠点としていましたが、立原さんにお願いしてサンダーランドの工場見学をさせてもらいました。英語のなまりが強くて聞き取るのが大変だった・・・。

立原氏:先生には、日産のアライアンスに興味を持っていただき調査していただいております。幅広く日産の研究をされているので、逆に先生から日産のことを教えていただくことも多いんです。

 

研修の成果
〜異なるバックグラウンドの人たちと一つの
目標に向かって進むのはグローバルな環境での仕事も同じ〜

立原氏:日産では1999 年にルノー社とのアライアンス後、グローバル化、ダイバーシティが加速しました。評価・報酬制度もグローバルスタンダードになり、国籍を問わず、優秀人財を登用する会社になりました。今、改めて日本人人財の育成が強化されています。グローバルに伍して戦うビジネスリーダーの育成に、どのような経験、教育をさせてどのようなフィールドで活躍させるのか、時間を割き、丁寧に議論して実行しています。
 私自身、異なる業界、様々なバックグランドを持った個性豊かな方たちとのアカデミーでの経験は、日産でいうクロスファンクショナルな文化に適応するためのよい訓練になりました。アカデミーではどんな意見もしっかり一つの意見として尊重されます。そのことで議論が発散して広がりと深みがもたらされ、全員で一つの目標に向かって進むことができるのです。グローバルな環境で仕事をするときも同様です。フランスに駐在中、部下の国籍は全員違いましたが、アカデミーの経験があったからこそ、マネージできたと思います。

 

派遣企業、参加者へのメッセージ
「世の中を変える“ ゲームチェンジャー” になって」

八代氏:トップマネジメント、次世代グローバルリーダー育成はもちろん、ファンクショナル・マネジャーの育成など、人財の幅を広げるために経営アカデミーは有効な手段です。会社は研修の効果を長い目で見てほしいと思います。研修後には長く会社で貢献してもらえる仕事をアサインすることも考えてほしい。また、研修に送り込む際には、職場の理解も必要です。参加者が仕事を抜けて研修に行きやすい雰囲気や組織文化も重要でしょう。

立原氏:人財はアセットです。どんな時代になれ、世の中を変えていくのは人なので、人財への投資は企業として必須です。特に外部研修は、一人の努力では構築できないネットワークを築ける貴重な機会です。この機会を投資と捉えて積極的に活用してほしいと思います。
 参加者の方には、他流試合を楽しみ、世の中を変えていく“ ゲームチェンジャー” になっていただきたいです。

※所属・役職は2018年9月12日時点

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